30年くらい前では、アトピー皮膚炎といえば、両親から濃厚なアレルギー遺伝的素因を受け継いだ乳幼児ので、「小学校入学頃には何とかなります。遅くとも小学校5~6年 になれば、10人のうち9人までは治りますから」と言い切れたものでした。
またアトピーで悩んでいる乳幼児の数もそれほど多くなく、話題にもなりませんでした。
ところがこの20年くらいでしょうか。あれよあれよという間に子供たちのヒフ炎が増加しました。従来の「アトピー炎」という診断名は大きく変更を迫られ、一方では「アトピー皮膚炎」と言い過ぎるという批判もあります。「アトピー」は「よくわからない」という意味ですから、もともと「原因も治療法もよくわから」と名付けられたのですが、最近ではますます混迷を深めているといってよいでしょう。
最近の特徴は、遺伝的な素因とは無関係で発症することが多い。幼子児にもっとも多いのが、10代、20代、遅ければ30代、40代にはじめて発症することもよくある、ということでしょう。「湿疹」本来の湿ったジクジクした湿疹は少なく、カサカサと乾いて痒い、いわば「乾疹」の時代です。
現代のアトピーもその代表で、カサカサと乾燥しているのが特徴です。乾いたヒフの病変としては「乾癬」(パラパラとコイン状の苔癬が全身に拡がる)と「魚鱗癬」(いわゆるサメ肌のひどいやつで、全身の表面が魚のウロコのように見える形成不全、魚化異常といいます)の二つが代表ですが、現代のアトピーはこの二つと非常に似ている、という印象があります。たまたまアトピーと乾癬や魚鱗癬が重なっている患者さんがいる、とみるよりも、根は同一と考えたいと思っています。
いずれにせよ、原因はアレルギー体質、免疫異常、という漠然としたことしか分かっていません。急速に増加していることから、環境変化に原因を求めるとすれば、衣服が化学繊維になったこと、食品に添加物が過剰に使われていること、小さな時から何かというと小児科からすぐ薬をもらい服用させる習慣、吸っている大気の汚染、などでしょう。絨毯のダニも原因の一つといわれます。
子供達を巻き込んだ、忙しすぎる人工的すぎるストレス社会のことも、忘れてはなりません。喘息の子供達が転地療養をするように、重症アトピー皮膚炎の子供たちも、区や市の施設を使って親元から離れて生活するのは大変よいことです。もっとも大人にそんなことはできないし、私たちにとりあえずできることは、絨毯を敷かないすっきりした板の間にかえること、食品に気をつけること、くらいでしょう。

